税務調査が入るまでの流れ——調査官は何を考えているのか

「税務調査の連絡が来た」と聞くと、多くの方が突然のことに戸惑い、どう対応すればいいか分からないまま当日を迎えてしまいます。

しかし、税務調査は調査官にとって綿密な準備のうえで行われるものです。調査先の選定から事前準備、通知、そして当日のやり取りまで、調査官には一貫した流れと意図があります。

その流れを事前に知っておくだけで、いざ連絡が来たときの対応が大きく変わります。この記事では、調査官側の視点から税務調査が入るまでの流れを整理します。

■ 税務署における納税者の管理

税務調査はランダムに行われているわけではありません。税務署では、管内の納税者をいくつかの区分に分類して管理しています。

その区分は、過去の調査結果や申告内容の推移、日頃の情報収集などをもとに判断されており、いわば各納税者に対する調査の必要度を示すものです。

この区分が調査先の選定に大きく影響します。直近の申告内容を踏まえたうえで、調査が必要と判断された先に対して調査が行われるというのが基本的な流れです。

「何年も調査が来ていないから大丈夫」と思っている方もいますが、申告内容の変化や新たな情報収集の結果によって、突然対象になることがあります。過去の実績だけで安心するのは禁物です。

■ 調査官が行う事前準備

調査先が決まると、調査官はすぐに現場へ向かうわけではありません。まず申告内容を徹底的に分析し、調査の狙いを絞り込む作業から始まります。

① 申告書・決算書の数値分析

直近3期分の決算書の数値を横並びで確認し、単年ベースで突出した数値がないか、また複数年にわたって対売上比率に異常がないかを確認します。経費の急増、売上に対して利益率が極端に低い期、特定の科目だけが突出して多い年などがあれば、そこが調査の重点項目として絞り込まれます。調査官はこの段階で「どこを見るか」の狙いをある程度定めています。

② 取引先の状況把握

申告書の内訳書に記載されている仕入先や外注先のリストを確認し、各取引先の申告状況をシステム上で把握します。取引先の申告内容との整合性が取れているかどうかも、調査の重要な着眼点のひとつです。必要に応じて市区町村への照会が行われることもあります。

③ 業種特性のインプット

業種によって不正の形態も分析の方法も異なります。調査官は対象者の業種に応じた特性や業界動向を事前にインプットしたうえで調査に臨みます。また、同業種の過去の調査事例も参考にします。どのような不正が多いか、どこに目を向けるべきかを、過去の実績から学ぶためです。

④ 過去調査の記録確認

対象者が過去に税務調査を受けていれば、その記録が資料として残っています。会社の体質や経営者の性向、過去の調査でどのような点が指摘されたかなどを事前に把握したうえで調査に臨みます。

⑤ HP・SNS・現地確認

会社のウェブサイトや代表者のSNSも、事業実態を把握するための重要な情報源です。特に代表者個人のSNSは、その人の志向や金銭感覚、生活水準を把握するうえで参考にされることがあります。申告上の収入と比べて明らかに高額な生活をしていないか、海外旅行や高級品の購入など、収入規模に不相応な支出が見られないかといった点も確認の対象になります。申告内容と実際の生活実態に乖離があれば、そこが調査の着眼点になり得ます。「SNSに載せているのはプライベートだから関係ない」とは言い切れないのが実情です。

さらに、調査前に実際に現場へ足を運び、事業所の規模感や設備、人の動きといったリアルな状況を確認することもあります。調査当日に改めて確認するより、事前の方が体裁を整えられる前の状態を把握できるためです。申告書上の売上規模と、実際の事業所の様子が釣り合っているかどうかも、調査官が肌感覚で確認するポイントのひとつです。

⑥ 当日の質問事項の整理

以上の準備を踏まえて、調査当日に納税者へ直接確認する事項を整理します。調査官は当日、何となく話を聞いているわけではなく、事前に狙いを定めたうえで質問を組み立てています。

■ 事前通知——連絡が来るタイミングと内容

調査先と調査の準備が整うと、納税者への事前通知が行われます。通知は原則として電話で行われます。

税理士が関与している場合は、納税者への直接連絡ではなく、税理士へ連絡が入ります。日程の調整も税理士を通して行われるため、納税者が税務署と直接やり取りをする必要がなくなります。

事前通知で伝えられる内容は法令で定められており、以下の事項が通知されます。

  • 調査対象者
  • 調査対象年
  • 調査対象税目
  • 確認する資料の種類
  • 調査の日時・場所
  • 訪問する調査官の人数・氏名

この段階での手続きは形式的なものではありますが、ここで税理士が間に入ることには大きな意味があります。調査官の立場からすると、税理士が関与している案件は対応に慎重にならざるを得ません。不適切な対応をすれば税理士から指摘を受けるため、調査の進め方においても自然と丁寧な対応が求められます。税理士の関与があるだけで、調査官側の心理的なハードルが上がるのは事実です。

■ 調査当日——調査官は何を見ているのか

事前通知を受けて調査当日を迎えた際、多くの方が「すぐに帳簿や資料を確認されるのでは」と思うかもしれません。しかし実際には、調査官はいきなり資料の確認から始めるわけではありません。

まず行われるのは、事業の概況についてのヒアリングです。事業内容、取引の流れ、主要な取引先、従業員の状況など、事業全体の実態を聞き取りながら、事前に把握していた情報の解像度を上げていきます。これは過去に蓄積されたデータを更新する作業でもあります。

この段階で調査官が重視するのが、納税者との信頼関係の構築です。話しやすい雰囲気を作り、率直なやり取りができる関係性を築けるかどうかで、その後の調査の展開が大きく変わります。本音ベースで話ができる関係性になれば、最終的な落としどころについても現実的な話し合いができるようになります。

AI活用が進み、調査先の選定や数値分析の精度が上がっても、調査当日のやり取りは結局のところ人対人の話になります。調査官の技量が問われる場面でもあります。

納税者側として知っておきたいこと

調査当日、納税者側として意識しておきたいのは「必要以上に話さない」ということです。悪いことをしていなければ何も問題はありませんが、口は災いの元という言葉の通り、余計な発言が思わぬ方向に調査を広げてしまうことがあります。聞かれたことに対して正確に答える、それ以上でもそれ以下でもないというスタンスが基本です。

調査官の発言にはひとつひとつ意図があります。その腹の内を知っておくだけで、やり取りの意味を理解しながら冷静に対応できるようになります。

■ まとめ

税務調査は、連絡が来た時点ですでに調査官の準備が整った状態で始まります。納税者の区分管理、申告書の徹底分析、取引先の状況把握、現地確認——調査官はこれだけの準備をしたうえで調査に臨んでいます。

その流れを知っておくことで、いざ連絡が来たときに慌てずに対応できるようになります。そして何より重要なのが、税理士への早めの相談です。

当事務所の税理士は、税務署において任意調査の最前線を担う資料調査課での勤務経験を持っています。調査官がどのような思考で準備を進めるか、当日どのような意図でやり取りをするかを、実務の経験から把握しています。税務調査は、税理士によって対応の質が大きく変わる場面のひとつです。

当事務所では、調査対応のみのご依頼も承っております。これまでに、突然の調査連絡をきっかけにご相談いただき、最終的な調査結果において納税者にとって納得のいく形での解決に至ったケースがあります。調査の結果は、誰が対応するかによって大きく変わることがあります。

「突然、税務調査の連絡が来た」「調査当日までに何を準備すればいいかわからない」「調査の内容に納得がいかない」といったお困りの方は、まずは当事務所にご相談ください。

顧問先のお客様はもちろん、他の事務所にご依頼中の方や、現在税理士をお持ちでない方からのご相談も承っております。

宇部市・山陽小野田市・山口市周辺の事業者の方、お気軽にお問い合わせください。

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