この記事のポイント
「税務調査が来た」と聞くと、何か悪いことをしていた人だけに関係する話のように感じるかもしれません。
しかし実際には、特に不正をしているわけではなくても、税務調査の対象として選ばれることがあります。
税務調査は、税務署が申告内容の確認を行うための手続きです。調査の対象となるかどうかは、申告内容や事業の状況など、さまざまな要素から判断されています。
この記事では、税務調査が来やすいとされる状況や、事前に確認しておきたいポイントを整理します。
税務調査は、納税者が正しく申告・納税しているかを確認するために行われます。
申告内容に誤りや不自然な点があると判断された場合、税務署から連絡が来ることがあります。また、申告内容そのものに問題がなくても、業種や売上の規模、申告の傾向など、複数の要素を踏まえて調査先が選定されることがあります。
税務調査は「調査が来た=悪質な脱税をしている」という意味ではありません。ただ、対象になると対応に時間と労力がかかるため、日頃から適切な記帳・申告を心がけることが大切です。
税務調査には、件数が集中しやすい時期があります。
税務署の人事異動は7月に行われます。そのため、新体制での調査活動は7月からスタートし、翌年1月末頃までが、年間の調査件数の大半を占める時期とされています。
2月から3月は確定申告の時期にあたるため、税務署内でも申告受付対応が優先されます。そのため、この期間は調査活動が落ち着く傾向があります。
ただし、ひとつ注意が必要な点があります。
税理士が関与していない納税者については、確定申告期であっても調査対象になることがあります。
税務調査の現場では、税理士が関与している場合、税理士を通じてやり取りが行われます。一方、税理士が関与していない場合は、税務署が納税者と直接やり取りをすることになります。
納税者にとっては、税務上の専門知識がない状態で調査官と対応しなければならない場面が生じます。どこまで資料を出すべきか、どのように説明すればよいかといった判断が難しく、結果として調査が長引いたり、本来必要のない対応を求められたりするリスクが高くなりやすい面があります。
税務調査の連絡が来た場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
税務調査の対象は、申告書の数字だけを見て決められているわけではありません。税務署は、日頃からさまざまな方法で情報収集を行っています。
① 申告書・決算書の数字の分析(最も基本となる手法)
調査先の選定において、最も根本となるのは、納税者が提出した申告書や決算書に基づく数字の分析です。
税務署には過去の申告データが蓄積されており、売上・利益・経費などの推移を複数年にわたって分析することで、申告内容に不自然な動きがないかを確認しています。
経験のある調査官であれば、調査に入る前の段階で申告書の数字をもとにおおよその狙いを定め、どの項目に問題がありそうか、追徴税額がどの程度の規模になるかまで見当をつけたうえで調査に臨むことがあります。
なお、近年ではこうした申告データの分析をAIに委ねる方向での取り組みも進んでおり、調査先の選定はより精度の高いものになってきています。
申告書や決算書の数字は、提出した時点から税務署の目に触れています。「調査が来てから対応すればいい」ではなく、提出前から正確な内容を心がけることが重要です。
② 内部通報・タレコミ
意外に思われるかもしれませんが、電話による内部通報が調査のきっかけになることがあります。元従業員や取引関係者などから「あの会社は売上を隠している」といった情報が寄せられ、それが調査につながるケースです。
③ チラシ・広告・SNSなどの情報
店舗のチラシや求人広告、ウェブサイト、SNSの投稿なども、税務署が参考にする情報源のひとつです。たとえば、申告している売上規模と、広告から見える事業の規模感が大きくかけ離れている場合、確認が必要と判断されることがあります。
④ 臨場による情報収集
調査官が実際に店舗や事業所の周辺に足を運び、状況を確認することもあります。営業の様子、来客数、立地や規模感など、申告内容との整合性を現場で確認するためです。
⑤ 調査先の取引先からも情報を収集する(反面調査)
税務調査では、調査対象の会社や個人事業主だけでなく、その取引先に対しても確認が行われることがあります。これを「反面調査」といいます。
たとえば、ある会社の売上や経費の内容を確認するために、その会社と取引のある仕入先や得意先に対して、取引の内容や金額についての確認が行われるケースです。また、ある会社への調査の過程で、取引先の申告内容との間に不整合が見つかった場合、その取引先が次の調査対象の候補として把握されることもあります。
つまり、自社に直接連絡が来なくても、取引先への調査をきっかけに自社の情報が税務署に把握されているケースがあります。取引先との間で請求書・領収書・契約書などが適切に整理されていることが、いざというときの対応力につながります。
⑥ 現金商売への調査で行われることがある手法
特に現金売上が中心の店舗に対しては、調査の前日に番号を控えた1万円札をお客として使用し、翌日の調査の際にその紙幣が売上として正しく記録・保管されているかを確認するという手法が取られることがあります。
これは不正を前提にした疑いをかけているというよりも、現金売上が適切に計上されているかを実態として確認するための手法のひとつです。現金商売を営んでいる方は、日々の売上をその日のうちに正確に記録しておくことが特に重要です。
税務署は、申告書の数字だけでなく、こうした情報も踏まえながら調査先を選定しています。「何もやましいことはない」という場合でも、記帳や書類の整備を日頃からしっかり行っておくことが、いざというときの対応力につながります。
① 売上や利益の変動が大きい
売上や利益が前年と比べて大きく増減している場合、その原因が申告内容から読み取りにくいと、確認が必要と判断されることがあります。事業の内容によって売上が変動することは自然なことです。ただし、その変動の背景を帳簿や資料で説明できる状態にしておくことが重要です。
② 同業他社と比べて利益率が低い
同じ業種でも、利益率には一定の傾向があります。申告された利益率が業種平均と大きくかけ離れている場合、経費の計上方法や売上の計上漏れなどについて確認が行われることがあります。「うちは利益が出にくい業種だから」という実態がある場合でも、それが帳簿から読み取れる状態であることが大切です。
③ 現金売上の多い業種
飲食業、小売業、医療・美容業など、現金での取引が中心となる業種は、税務調査の対象として選ばれやすい傾向があるとされています。現金取引は記録が残りにくい面があるため、売上が適切に計上されているかどうかを確認する必要があると判断されやすいためです。現金売上が多い事業者の場合、日々の売上を正確に記録し、レジの記録や領収書などを適切に保管しておくことが特に重要です。
④ 経費の計上内容に不自然な点がある
業種や事業規模に対して、特定の経費が突出して多い場合、その内容について確認が行われることがあります。たとえば、売上規模に対して交際費や旅費・交通費が多すぎる場合、プライベートの支出が経費に混在していないかを確認されることがあります。経費として計上するものは、事業との関連性を説明できる状態で保管しておくことが基本です。
⑤ 申告内容に誤りや記載漏れがある
計算ミス、添付書類の不備、記載の不整合などがある場合、確認のために連絡が来ることがあります。また、過去の調査で誤りが見つかった場合、その後の申告内容についても継続して確認されやすくなることがあります。
⑥ 無申告・申告期限の遅れが続いている
申告期限を守らずに期限後申告が続いている場合や、申告そのものをしていない場合も、税務署が把握して連絡してくることがあります。申告を忘れていた、手続きが分からなかったという場合でも、時間が経つほど対応が複雑になる傾向があります。気づいた時点で早めに対処することが大切です。
⑦ 申告内容と事業主の生活水準が合っていない
申告している所得と、実際の生活状況が大きくかけ離れている場合も、確認が必要と判断されることがあります。たとえば、申告上の利益はわずかであるにもかかわらず、高級車を複数所有していたり、頻繁に海外旅行に行っていたり、高額な自宅に住んでいるといった状況です。
税務署は申告書の数字だけでなく、事業主の生活実態についても情報収集を行っています。SNSへの投稿や、登記情報、車両の情報なども、判断材料のひとつになり得ます。申告内容と生活実態の間に大きなギャップがある場合は、その背景を説明できる状態にしておくことが大切です。
税務調査の対象になりにくくするためというよりも、調査が来た際に適切に対応できるよう、日頃から以下の点を意識しておくことが大切です。
記帳を適切に行う
売上・経費を正確に記録し、帳簿と実態が一致している状態を保つことが基本です。
証拠書類をきちんと保管する
領収書・請求書・契約書などは、経費の内容を説明できる状態で保管します。電子データで受け取ったものはデータのまま適切に管理する必要があります。
申告期限を守る
期限内に正確な申告を行うことが、税務面での信頼につながります。
不明な点は早めに確認する
経費として計上できるかどうか迷う場合や、処理方法に不安がある場合は、早めに専門家に確認することをおすすめします。
税務調査は、特定の悪質な事業者だけを対象にするものではありません。申告内容や事業の状況によっては、適切に申告をしている事業者にも連絡が来ることがあります。
税務署は申告書の数字だけでなく、蓄積されたデータの分析、通報・広告・現場での情報収集、取引先への反面調査、さらには事業主の生活実態まで、さまざまな角度から情報を集めています。また、税理士が関与していない納税者は、調査の時期を問わず対象になりやすい面があります。
大切なのは、調査が来た際に帳簿や証拠書類で内容を説明できる状態を日頃から整えておくことです。
税務調査は、連絡が来てからの対応が非常に重要です。
どのような資料を準備するか、調査官とのやり取りをどう進めるか、どこまで対応してどこで毅然と対応するか。こうした判断のひとつひとつが、調査の結果に影響することがあります。
当事務所の税理士は、国税組織において任意調査の最前線を担う資料調査課での勤務経験を持っています。調査の現場対応はもちろん、調査官がどのような思考で申告内容を読み解くか、どこに目を向けながら調査を進めるかを、実務の経験から把握しています。
税務調査は、税理士によって対応の質が大きく変わる場面のひとつです。
「突然、税務調査の連絡が来た」「調査当日までに何を準備すればいいかわからない」「調査の内容に納得がいかない」といったお困りの方は、まずは当事務所にご相談ください。
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