前回の記事では、税務調査が入るまでに調査官がどのような準備をしているかを解説しました。
今回は、調査当日から調査が終了するまでの流れを整理します。
調査がどのように進み、最終的にどう決着するのかを知っておくことで、いざ調査が入った際の心構えが大きく変わります。
この記事のポイント
税務調査は、基本的に午前9時または10時にスタートします。
午前中はすべて概況聴取に使われるのが基本です。調査官の狙いは、まず納税者との信頼関係を構築すること、そして会社の概況——人・物・金の流れを把握することにあります。
具体的には、取引のフロー、お金の流れ、各業務フェーズごとの責任者や担当者を確認しながら、事前準備の段階で把握していた疑問点について質問していきます。これらの発言が、実際の帳簿等と整合しているかどうかを確認するための材料収集でもあります。
概況聴取で聞いた内容と、実際の取引内容に違いがあれば、その部分について調査の深度が高められていきます。逆に、概況の内容に矛盾がなければ、その後の調査がスムーズに進むことになります。
現金監査が行われることもある
概況聴取が終わると、現金の監査が行われる場合があります。調査当日までの現金残高と出納簿の残高が一致しているかどうかを確認するものです。
この確認は、単に金額の正確性を見るだけでなく、会社の現金管理に対する考え方を見るためのものでもあります。きっちりと管理されているか、それともずさんな状態かによって、会社のスタンスが見えてきます。
こうした日頃の管理姿勢の積み重ねが、最終的に税務署が各納税者の管理区分を判断する際の材料として使われることになります。
午後からは、具体的な帳簿の確認に移ります。調査の規模感によって展開は異なりますが、基本的な進め方には共通点があります。
大数観察からスタート
まず行われるのが大数観察です。税務署に提出される決算書では月ごとの内訳を把握することができないため、元帳などから月ごとの勘定科目の推移を確認します。
利益率が悪い月や、特定の勘定科目で突出した数値が出ている部分を把握することから調査が始まります。いきなり細部を確認するのではなく、まず全体の動きを見るという進め方です。
業種ごとに異なる深掘りのポイント
業種によって調査の展開も異なります。たとえば建設業であれば、支出された工事の台帳を確認していきますし、卸売業であれば対象となる取引内容について深掘りが行われます。業種特有の取引構造に応じて、確認すべきポイントが変わってきます。
大数観察や個別取引の確認の中で、調査官が疑問を持った点については、段階的に確認が進められます。
まず納税者本人に確認する
最初に行われるのは、その取引について納税者本人への確認です。発言に十分な信ぴょう性があれば、その時点で確認は終わります。一方、発言があいまいであったり、信ぴょう性に欠けると判断された場合は、さらに掘り下げて確認が行われます。
会社の資料での裏付け確認
本人への確認だけで解決しない場合、会社に保管されている資料でその取引内容を裏付けられるかどうかが確認されます。
反面調査という選択肢
会社の資料でも解決しない場合、取引先に直接確認を行う反面調査が実施されることがあります。
ただし、反面調査は調査官にとっても簡単な選択ではありません。取引先との関係性によっては、力関係上、調査対象となった会社側が不利な立場に置かれてしまうケースもあります。また、反面調査が行われたこと自体が、その後の取引関係に影響を及ぼす可能性もあるため、調査先にとっても避けたい事態のひとつです。
そのため、反面調査に発展する前の段階で、調査先側が事実を話してくれるケースもあります。最終的には人と人との信頼関係によって調査が進んでいく面が大きく、調査官としても、できることなら反面調査を行わずに早期に決着をつけたいという思いがあるのも実情です。
調査の過程で仮装または隠ぺいの事実があると判断された場合、調査官はその事実を裏付ける証拠を整える必要があります。
その際に作成されるのが、代表者や担当者への聞き取り内容をまとめた「質問応答記録書」です。作成方法には個人差がありますが、基本的には一問一答形式で、仮装または隠ぺいの事実を固めていく形で進められます。
この手法は反面調査においても同様です。取引先の主張を聞いたうえで、その内容を質問応答記録書としてまとめ、それを基に代表者へ改めて確認を行うという流れになります。
調査の最終段階では、疑問が残った事項をまとめた一覧表が作成され、その内容についてすり合わせが行われます。
税務署側が提示する一覧表は、基本的に最大値で示されます。その中には、実際には否認するのが難しいと考えられる項目が含まれていることもあります。
このすり合わせの段階は、税理士の存在が最も活きる場面のひとつです。その内容ひとつひとつについて、専門的な根拠をもとに精査し、交渉していくことができるかどうかで、最終的な結果は大きく変わります。
納税者だけで対応する場合、専門知識がない状態で交渉を進めることになり、提示された内容をそのまま受け入れざるを得ない場面も出てきます。税理士が間に入ることで、根拠のある主張ができるようになり、納得感のある形での解決に近づけることができます。
修正申告は、あくまで納税者が自主的に誤りを認めて提出するものです。そのため税務署としても、納税者が納得できる形に近づけなければ、修正申告書の提出には至りません。
なお、納税者側が納得できず、税務署側も内容を譲れないという状況が続いた場合、税務署が調査で得た事実に基づいて申告内容を強制的に変更する「更正」という処分が行われることもあります。ただし、これは双方にとって望ましい結末ではなく、一般的な事案ではこうした事態に至らないよう、日頃からの関係構築や、根拠となる資料の準備が重要になります。
修正申告を行う場合、当初の申告との差額分の納税が必要になります。これに加えて、いくつかの附帯税が課されることになります。
過少申告加算税
本来納めるべき金額を当初申告していなかったことへの罰則として、過少申告加算税が課されます。調査による更正を予知した修正申告の場合、新たに納める税額の10%が課されます。ただし、新たに納める税額が当初の申告納税額または50万円のいずれか多い金額を超える場合、その超えた部分については15%の税率となります。
重加算税
申告内容に仮装または隠ぺいの事実が認められる場合は、過少申告加算税に代わって重加算税が課されます。税率は対象となる税額の35%です。
重加算税を取れるかどうかは、調査官にとって大きな成果のひとつとされています。仮装・隠ぺいの事実を立証できるかどうかが、調査の結果を大きく左右する分岐点になります。
税務調査は、当日の概況聴取から始まり、大数観察による全体把握、個別取引の深掘り、そして最終的なすり合わせを経て決着に至ります。
調査の過程では、納税者の発言の信ぴょう性、資料による裏付け、場合によっては反面調査まで、段階的に事実が確認されていきます。そして最終的な決着の場面では、専門的な根拠をもとに交渉できるかどうかが、結果を大きく左右します。
当事務所の税理士は、税務署において任意調査の最前線を担う資料調査課での勤務経験を持っています。調査がどのように進み、どこで何が決め手になるかを、実務の経験から把握しています。
実際に、当初の指摘内容について論点を整理し、必要な資料を整えて説明した結果、調査官との合意のもとで適正な金額へ修正できたケースもあります。調査官がどのような視点で物事を判断しているかを理解しているからこそ、質問への答え方や資料の提示の仕方ひとつで、交渉の流れを有利に進めることができます。
当事務所では、調査対応のみのご依頼も承っております。調査の連絡が来てから終了まで、一貫してサポートすることが可能です。
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