相続税ってそもそも何?基本からわかりやすく解説

ご家族が亡くなったあと、「相続税がかかるのか」「何をすればいいのか」が分からず不安になる方は少なくありません。

「相続税は遺産の半分近く持っていかれる」というイメージを持っている方もいますが、実際に相続税の申告が必要となるケースは、亡くなった方全体の約1割程度です。ただし、都市部の不動産価格上昇などにより、課税対象となる方は増加傾向にあります。

この記事では、相続税の基本的な仕組みを、初めての方にもわかりやすく整理します。

■ 相続税とは何の税金か

相続税は、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ際にかかる税金です。

現金や預貯金だけでなく、不動産や株式、生命保険金、死亡退職金なども相続税の対象になることがあります。一方で、お墓や仏壇といった祭祀財産、国や地方公共団体への寄附財産などは対象外です。また、生命保険金・死亡退職金については「500万円×法定相続人の数」までは非課税となる枠が設けられています。

■ 相続税がかかる・かからないの境界線(基礎控除)

相続税には「基礎控除」という非課税の枠があります。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。遺産の総額がこの金額以下であれば、相続税はかからず、原則として申告も不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、申告を要件とする特例を使って税額がゼロになる場合は、税額がゼロであっても申告が必要になる点には注意が必要です(詳しくは後述します)。

なお、相続放棄をした人がいても、基礎控除額の計算上は「放棄がなかったもの」として法定相続人の数に含める点に注意が必要です。養子も法定相続人になりますが、基礎控除の計算に含められる養子の数には制限があります(実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで)。

国税庁の統計によると、令和5年に相続税の課税対象となった人の割合(課税割合)は約9.9%でした。平成27年に基礎控除額が現行の水準に引き下げられたことで、それ以前と比べて課税対象となる人は倍増しています。「うちには関係ない」と思っていても、不動産をお持ちの場合などは、基礎控除を超えてしまうケースが増えてきています。

■ 誰が相続税の対象になるのか(相続人の範囲)

相続人になれる人(法定相続人)には優先順位があります。

  • 配偶者は常に相続人になります
  • 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫などが代わりに相続する「代襲相続」もあります)
  • 第2順位:父母などの直系尊属(第1順位の人がいない場合)
  • 第3順位:兄弟姉妹(第1・第2順位の人がいない場合)

例えば、父・母・長男・次男という家族構成で父が亡くなった場合、法定相続人は「母・長男・次男」の3人になります。

■ 相続税はどうやって計算されるのか

相続税は、遺産の総額に直接税率をかけるものではありません。次のような手順で計算します。

① 遺産総額から基礎控除を差し引く

正味の遺産額(相続財産から債務や葬式費用を差し引き、非課税財産を除いたもの)から基礎控除額を引いた「課税遺産総額」を求めます。

② 法定相続分で割り振る

課税遺産総額を、各相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して割り振ります。

③ 速算表で税率をかける

国税庁が公表している「相続税の速算表」を使い、各相続人の取得金額に応じた税率(10%〜55%の8段階)をかけて、控除額を差し引きます。

④ 実際の取得割合に応じて配分し、各種控除を適用する

ここで「配偶者の税額軽減」などの控除を適用し、最終的な納税額を確定させます。

ポイント:税率55%は遺産全体にかかるわけではない

「相続税の最高税率は55%」と聞くと身構えてしまいますが、これは遺産総額にそのままかかる税率ではありません。実際の税負担は、相続人の人数や家族構成(配偶者の有無など)によって大きく異なり、最高税率55%がそのまま適用されるケースはごく限られています。一般的には、相続人の数が多いほど、また配偶者がいるケースほど、実質的な負担は軽くなる傾向があります。

■ 配偶者には大きな税額軽減がある

配偶者が相続する場合、「配偶者の税額軽減」という制度があり、取得した遺産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。

ただしこの制度を使う場合、相続税額がゼロになったとしても、申告期限までに申告書を提出する必要があります。「税額がゼロだから申告しなくていい」と思い込んでしまうと、特例が適用されず、思わぬ税負担につながることもあるため注意が必要です。

なお、配偶者の税額軽減で一次相続の負担を軽くしすぎると、その後配偶者が亡くなった際の「二次相続」で、今度は配偶者の税額軽減が使えない分、子の世代の負担が重くなることがあります。一次相続・二次相続を通した視点で考えることも大切です。

■ 相続税が「キャッシュで厳しくなる」理由

相続税の大変さは、税額の大きさだけでなく「現金で一括納付しなければならない」というルールにあります。

相続税は、不動産・株式・骨董品なども含めて評価した遺産全体に対して課税されますが、納税自体は原則として現金一括払いです。国税庁の統計によれば、相続財産のうち土地が約3割、家屋を含めると不動産が4割弱を占めており、財産の多くを不動産が占めるケースは珍しくありません。

つまり、評価額としては資産があっても、実際に手元にある現金は少ない、という状態が起こりやすいのです。

現金が足りないとどうなるか

申告期限(10ヶ月)までに現金が用意できない場合の選択肢は限られています。

  • 不動産や株式を売却して現金化する
  • 延納(分割払い)を申請する
  • 物納(財産そのもので納める)を申請する

ただし、不動産の売却は10ヶ月という期限内に終わらせようとすると「売り急ぎ」になり、本来の価格より安く手放してしまうリスクがあります。延納・物納はいずれも税務署の許可が必要ですが、特に物納は認められるケースが限られており、利用件数は多くありません。

だからこそ「事前の対策」が重要になる

相続税の対策というと「税額を減らす対策」を思い浮かべる方が多いですが、それと同じくらい重要なのが「納税資金をどう準備するか」という対策です。

具体的には、次のような方法があります。

  • 生命保険の活用:死亡保険金は受取人固有の財産として、遺産分割協議を待たずに比較的短期間で受け取れる場合が多く、納税資金の確保に役立ちます。さらに「500万円×法定相続人の数」までは非課税という枠もあるため、税負担の軽減も同時に行えます。
  • 資産の組み換え:使い道のない不動産を生前のうちに売却し、現金として残しておく
  • 遺言での配慮:不動産など現金化しにくい財産を相続する人に、納税資金も合わせて準備できるよう遺言で調整しておく

相続が起きてから慌てて対応しようとしても、10ヶ月という期限の中で不動産を売却するのは簡単ではありません。「相続税がかかりそうだ」と分かった時点で、早めに財産の構成(現金と不動産の比率)を確認し、対策を考えておくことが大切です。

■ 相続税はいつまでに、どこに申告するのか

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日(通常は死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。申告先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。

期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため注意が必要です。また、遺産分割協議がまとまっていない場合でも、申告期限は通常どおり進行します。分割が決まらないまま期限を迎える場合は、ひとまず法定相続分で取得したものとみなして申告する「未分割申告」を行います。この場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は当初の申告では使えませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、後日分割が確定した時点で更正の請求を行い、特例の適用を受けることができます。

■ まとめ

相続税は、基礎控除という非課税枠を超えた財産にのみかかる税金で、実際には相続税がかからないケースも少なくありません(課税対象となるのは全体の約1割程度)。一方で、配偶者の税額軽減を使う場合の申告義務や、不動産が多いケースでの納税資金不足など、判断や準備を誤りやすいポイントもあります。

なお、相続税がかからないケースであっても、不動産を相続した場合は「相続登記」(不動産の名義変更)が必要です。2024年4月の法改正により相続登記は義務化されており、正当な理由なく期限内(原則3年以内)に行わないと10万円以下の過料の対象となることがあります。相続税の有無にかかわらず、不動産を相続した際は登記の手続きも忘れずに行いましょう。

「うちは相続税に関係ない」と思っていても、不動産をお持ちの場合などは基礎控除を超えてしまうケースもあります。早めに財産の状況を確認し、必要であれば納税資金の対策も含めて準備しておくことが大切です。

当事務所では、宇部市・山陽小野田市・山口市を中心に、相続税の申告・相談についても対応しております。「相続税がかかるか分からない」「何から準備すればいいか不安」という方は、お気軽にご相談ください。

生前の相続対策から相続発生後の申告までサポートしております。

※本記事の内容は、2026年6月時点の法令・制度に基づいて作成しております。今後の法改正等により、取り扱いが異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

関連記事

TOP