相続と向き合う前に知っておきたいこと——家族で話し合うべき5つのポイント

「相続はまだ先の話」と思っていても、親が認知症になってから、あるいは突然亡くなってから初めて気づくことがほとんどです。準備が間に合わなかった結果、手続きが滞ったり、家族間でトラブルが起きたりするケースは少なくありません。

この記事では、相続と向き合う前にまず知っておいてほしいこと、そして家族が集まるタイミングで確認しておきたい5つのポイントをまとめています。難しい手続きや専門知識より先に、まず家族で話すこと——それが相続対策の本当の第一歩です。

■ 相続は「他人事」ではない

相続税がかかるのは全体の約1割程度です。しかし、相続税の有無にかかわらず、手続きや話し合いは全員に発生します。預貯金の名義変更、不動産の相続登記、保険金の請求——こうした手続きは、相続税がかからないケースでも必ず行う必要があります。

「うちは財産が少ないから関係ない」と思っていても、手続きを放置すると後々大きな問題になることがあります。相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく怠ると過料の対象になります。

■ 「まだ早い」は存在しない

相続の準備を後回しにしてしまう最大の理由は、「まだ元気だから大丈夫」という感覚です。しかし、親が認知症になってからでは、本人の意思を確認することができなくなります。遺言書を書くことも、生前贈与の手続きも、本人が判断能力を持っているうちにしかできません。

亡くなってからでは聞けないこと、元気なうちにしかできないことが、相続にはたくさんあります。「そのうち話そう」と思っているうちに、タイミングを逃してしまうケースは実務でも非常に多いです。

■ 一人で抱え込まない

相続は家族全員の問題です。一人の家族だけが財産の情報を把握していて、他の家族が何も知らないという状態は、いざという時に大きなリスクになります。

たとえば、親の銀行口座や保険契約の情報を長男だけが知っていて、親が亡くなった後に他の兄弟がその存在を知らないままになっていたとしたら、遺産分割の際に「財産を隠していたのではないか」という疑念が生まれることもあります。情報の共有は、家族間の信頼関係を守るためにも重要です。

■ 知らないことが一番怖い

相続に関するトラブルの多くは、「知らなかった」ことが原因で起きます。相続放棄の期限(3ヶ月以内)を過ぎてしまって借金まで引き継いでしまったケース、遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を進めてしまったケース、相続税の申告期限を知らずにペナルティが発生したケース——こうした事例は珍しくありません。

正しい知識を持ち、家族で情報を共有しておくことが、将来の後悔を防ぐ最大の対策です。

■ 家族で確認しておきたい5つのこと

相続の準備として、難しい手続きより先に、まず家族で話し合っておきたいことがあります。「切り出しにくい」と感じる方も多いですが、この5つのポイントを共有しておくだけで、いざという時の混乱は大きく変わります。

① 親の財産の全体像を把握する

預貯金(どの銀行・口座番号)、不動産(土地・建物の場所・名義)、生命保険(どの保険会社・受取人)、株式・投資信託——「どこに何があるか」を家族で共有しておくだけで、いざという時の混乱が大きく減ります。亡くなった後に口座を探し回ることのないよう、エンディングノートなどにまとめておくことも有効です。

② 親の意思・希望を聞いておく

誰に何を残したいか、不動産はどうしたいか、葬儀やお墓の希望はどうか——本人が元気なうちにしか聞けない話があります。認知症になってからでは、本人の意思を確認することができなくなります。「縁起でもない」と避けてしまいがちですが、この会話が後々の家族のトラブルを防ぐことにつながります。

③ 不動産をどうするか話し合っておく

不動産は、相続トラブルの最大の火種といわれています。現金と違って簡単に分けることができないため、相続人の間で意見が割れやすいのです。売る・残す・貸す・誰が住む——こうした方針を生前のうちに家族で話し合っておくことが、トラブルを防ぐ大きな一歩になります。

④ 遺言書の存在を家族で共有する

遺言書があるかどうか、どこに保管されているか——この2点だけでも家族で共有しておくと、相続トラブルのリスクが大きく下がります。保管場所については、自筆証書遺言であれば自宅または法務局(自筆証書遺言書保管制度)、公正証書遺言であれば公証役場で検索することができます。いずれの場合も、家族が保管場所を知っていることが重要です。

⑤ 万が一の時の連絡先・手続きをまとめておく

銀行・保険・年金の連絡先、誰が窓口になるかの役割分担、緊急連絡先——こうした情報を家族全員で共有しておくことが重要です。一人だけが把握している状態が最大のリスクです。エンディングノートや「もしもファイル」などにまとめておくと、いざという時にスムーズに動けます。

■ まとめ

相続の準備は、難しい手続きや専門知識より先に、まず家族で話すことから始まります。「相続は他人事」「まだ早い」という意識を変え、元気なうちに家族全員で情報を共有しておくことが、将来のトラブルを防ぐ最大の対策です。

家族が集まるタイミング——お盆、年末年始、法事など——を活用して、この5つのポイントについて話し合ってみてください。切り出しにくい話題ではありますが、その一歩が家族全員を守ることにつながります。

当事務所では、相続税の申告・相談はもちろん、相続に関する事前相談にも対応しております。「何から始めればいいか分からない」「家族でどう話し合えばいいか」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

宇部市・山陽小野田市・山口市を中心に、相続に関するご相談を承っております。

※本記事の内容は、2026年7月時点の法令・制度に基づいて作成しております。今後の法改正等により、取り扱いが異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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