確定申告で判断を誤りやすいポイントと対策

確定申告の時期になると、次のようなご相談を多くいただきます。

・経費にしてよいのか判断に迷う
・消費税の申告義務を見落としていた
・翌年の税負担が想像以上だった

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
その背景には、「仕組みの理解不足」があります。

ここでは、判断を誤りやすい3つのポイントと、その対策を整理します。

① 経費の判断

経費にできるかどうかは、「事業との関連性」で判断します。

特に判断が分かれやすいのは、

・自動車関連費用
・携帯電話やインターネット料金
・自宅兼事務所の家賃
・交際費

などです。

事業と私的利用が混在する場合は「按分」が必要になります。
この割合は、実態に基づき合理的に説明できることが重要です。

▶ 対策

・利用実態を記録しておく
・割合設定の根拠を明確にする
・証憑を整理して保存する

安易な全額経費計上は、後日の税務調査で修正を求められる可能性があります。

▶ 元国税調査官の視点

実務の現場では、証憑が整理されていない場合や、按分割合の根拠が曖昧な場合、結果として調査側の判断に委ねざるを得ないケースを見てきました。
一方で、「これも経費になるのだろうか」と迷う支出でも、利用実態や計算根拠を明確に説明できる場合には、適正に認められる場面もあります。

経費計上は「有利になるから入れる」という発想ではなく、
説明可能性を前提に判断することが重要です。
根拠と証憑を整えておくことが、最も有効な調査対策になります。

② 消費税の申告義務

一定の売上規模に達すると、消費税の申告義務が生じます。

原則は「2年前の課税売上高」に基づいて判定しますが、
インボイス制度の開始以降、免税事業者であっても取引先との関係で課税事業者を選択するケースが増えています。

消費税は、所得税とは別に納税が必要です。

黒字であっても、
消費税分の資金が不足するというケースは珍しくありません。

▶ 対策

・課税売上高の推移を毎年確認する
・消費税相当額をあらかじめ資金として確保する
・簡易課税制度の適用可否を検討する

▶ 元国税調査官の視点

現在の消費税制度については、特に「2割特例を適用できるかどうか」の判定に注意が必要です。
制度の適用要件を正しく理解していないまま申告してしまうと、後から修正が必要になる可能性があります。

実務の現場でも、制度の選択を十分に検討せずに申告してしまい、結果として不利な計算方法になっているケースを見てきました。

現在は2割特例が設けられていますが、将来的に5割へ移行することを見据えると、
・特例を適用するのが有利か
・簡易課税を選択する方がよいか
・原則課税で計算すべきか

仕入税額控除額を踏まえた比較検討が必要です。

消費税は「申告できればよい」というものではなく、制度選択の段階で差が生じます。
事前の試算と制度理解が、将来の負担を左右します。

③ 所得増加時の税負担

売上が伸びると増えるのは、所得税だけではありません。

・住民税
・事業税
・国民健康保険料

これらが翌年以降に連動して増加します。

「思ったより税金が高い」と感じるのは、この重なりが原因です。

▶ 対策

・翌年の税負担を概算で試算しておく
・納税資金を別管理する
・利益水準によっては法人化を検討する

法人化を検討するタイミング

総合的な節税対策として、法人化があげられます。
利益水準が一定額を超えてくると、所得税の累進課税やその他社会保険料負担の増加に伴い、
法人として運営していく方が、一般的にメリットが多くなってきます。

法人化には、

・所得分散による節
・役員報酬の活用
・社会保険加入による保障の安定

といったメリットがあります。

一方で、

・社会保険加入義務
・事務負担の増加
・設立費用

などの側面もあるため、総合的な判断が必要です。

▶ 元国税調査官の視点

個人事業と法人では、調査の進め方にも一定の違いがあります。

個人事業の場合、帳簿や証憑が十分でないと、推計によって所得を算定せざるを得ないケースもあります。
推計は合理的な方法に基づきますが、必ずしも実態と一致するとは限りません。

一方、法人の場合は帳簿整備が前提とされることが多く、
会計処理や内部管理体制を踏まえた検討が中心になります。

もちろん、いずれの場合も証拠に基づいて判断されるという点は共通しています。
ただ、管理体制の整備状況によって、調査対応の負担や結果に差が出ることはあります。

まとめ

確定申告は、単に書類を提出する作業ではありません。

1年間の収支を整理し、

・どこに利益が出ているのか
・経費構造に無理はないか
・税負担はどの程度増えるのか
・法人化を検討すべき水準か

を見直す機会です。

税金は、結果ではなく設計で差が出ます。

また、調査の現場では、確定申告で提出された、決算書や申告書の数字から確認が始まります。
数字の構造やバランスによって、確認の論点が整理されます。

決調査官の目につきやすい決算書の特徴については、あらためて記事で整理したいと思います。

当事務所では、申告書の作成だけでなく、
税負担の見通しや今後の方向性まで整理し、ご提案しております。

宇部市・山陽小野田市・山口市で確定申告に関するご相談は、
当事務所までお気軽にお問い合わせください。

関連記事

TOP